ETERNAL SWEETHEART  2
 どっと力が抜けてしまい、俺は頭を抱えてドカッと椅子に座った。

 ・・・・・・・キャナル・・・・・・・・・・。

「本当に何やってんのよ。ダメねぇ」

「・・・・・・・ミリィ」

 外にいたミリィがバスケットを抱えて戻ってきた。

「せっかくあたしが気を利かせて二人だけにしてあげたのに、何にもならないじゃない」

「そうは言ってもな・・・・・」

 そんなの、お前が自分で勝手にした事だろ、と、思わず言いたくなってしまう。

 理不尽な言いがかりをつけてくるミリィに反論しようとした時、ふいに俺の顔をじっと見つめる瞳と目が合った。

「な・・・・何だよ・・・・・・」

「・・・・・・・・好きな娘の事は、ちゃんと捕まえておかないと、そのうち愛想をつかされるわよ?」

「!?・・・・なっ・・・・!!」

(なんでその事をっっっ!?)

 図星を指されてしまい、絶句した。

「それくらい見てれば分かるわよ。ホント、分かり易すぎるわ、ケイン」

「・・・・・・お前の目がおかしいんじゃないのか?第一、キャナルは人間じゃないんだぞ?」

「それでも・・・・・好きなんでしょ?」

「・・・・・・・・・」

 内心の動揺をひた隠して努めて冷静に答えた俺に、ミリィは全て分かっているというように笑顔でそう言った。

「キャナルだって、きっと同じ気持ちなんだと思う。でも、彼女は一緒に居る事を避けている。

何故だか分かる?」

 その問いに、俺は答えなかった。

 沈黙を続ける俺に業を煮やしたのか、ミリィは悲しげな表情で口を開いた。

「・・・・・・彼女もまた、人との垣根を越えられないと思ってるからよ。その想いを忘れようとしているからよ。

本当はケインだって分かっているんでしょ?だから、何も気付かない振りをした。

現実から、目を背けたのよ」

「俺はっ・・・・・!!」

「違うなんて言わせない」

「ミリィ・・・・・・・」

 ミリィは大粒の涙をぼろぼろと零しながら、尚も続ける。

 キャナルの為に。俺の為に。そしておそらく、自分の為に・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・ミリィが、好意を寄せてくれている事は知っていた・・・・・・・。

 そして俺は、それにも気付かぬ振りをした・・・・。

 ・・・・・・・・・サイテーだな・・・・・・・・。

 今の関係を壊したくないと願うばかりに、二人を傷つけた・・・・。

「・・・・・・・・あたしね・・・・・・・・二人に出会って、一緒に旅をして、仲間になれて、本当に嬉しかった。

あたしの素性を知ってからも、変わらず同じように接してくれた。

あたしにとって、あなたたちはかけがえの無い存在になったわ。だから幸せになって欲しい。

ケインにも、キャナルにも」

 ミリィは、眩しいくらいの泣き笑いの笑顔でそう言った。

「ごめん、ミリィ・・・・・俺・・・・・・・・・・」

「謝るような事は何も無いでしょ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「しっかりしなさいっ、ケイン!!」

「・・・・・ああ、サンキュー、ミリィ」

 思いやりの込もった叱咤激励を受けて、俺はソードブレイカーへと向かった。

 彼女に自分の想いを伝える為に。





 船に乗り込みキャナルの姿を探すと、彼女はコックピットに座っていた。

 何も映っていないスクリーンを、ただじっと見つめたままで。

 俺が入ってきた時から存在に気付いている筈なのに、こちらを向こうとはしない。

「・・・・キャナル・・・・・・・・俺・・・・・・・・」

「ケイン、新しい船を一隻買って欲しいの」

「・・・・・・・・え?」

 話し掛けようとした俺の言葉を遮るようにキャナルが言った。

 突然、何を言い出すのか。