ETERNAL SWEETHEART  1
 ナイトメアとの闘いを終えて、俺はキャナルと共に俺の生まれ育った星、惑星E-17へと戻った。

 俺たちよりも一足先にここで帰りを待っていてくれたミリィと再会し、改めて三人での新たな生活が始まった。

 とりあえず命を狙われる心配も無くなり、トラ・コンとしての依頼も以前のように受けながら、

3ヶ月余りがたった頃・・・。

「ねぇ、やっぱり変じゃない?」

「何が?」

「決まってるでしょ? キャナルの事よ」

「・・・・・・・お前もそう思うか?」

「当然」

 食後の紅茶を飲みながら眉間に皺を寄せて、ミリィは俺に話し掛けてきた。

 そう。

 最近キャナルの様子がおかしい。

 何かと理由を付けて俺達を避けるようになった。

 いや、避けるというより余所余所しくなったと言うべきか。

 とにかく三人で行動するのを嫌がっているように思える。

「ケイン、何かしたんじゃないの?」

「俺が一体何をしたって言うんだ!?」

「だって、それしか考えられないじゃない」

「そんな訳ないだろ!!」

「じゃあ、どうして?」

「・・・・・・俺に聞かれても・・・・・・・」

 ミリィはふうっと一つ溜め息をついて紅茶を啜った。

 窓の外のソードブレイカーに目をやるが、キャナルがここへ来る気配は無い。

 以前は、自分が食べられなくても食事の時には必ず同席したのに、いつの頃からかそれをしなくなった。

 いくらどんなに誘っても、

「あたしには必要ないから」

と言って拒む。

「・・・・時々、どこか遠くを悲しそうな瞳で見つめてるのよ。何だか、声を掛けちゃいけないような

雰囲気で・・・・・」

 困惑したミリィにそう言われたが、俺は何も言えなかった。





 翌朝、目が覚めると、家の中でキャナルの声がした。

 俺は慌てて飛び起きて、壊れんばかりの勢いでドアをバンッと開けた。

「おはよう、ケイン。今日は何も仕事が入ってないから、早起きしなくても大丈夫よ?」

「あ、ああ、おはよう・・・・。そうだな。・・・・・・・・・・・・・・・・・ミリィは?」

「外で洗濯物干してるわ」

「そっか・・・・」

 いつもと変わらない様子のキャナルなのに、俺は何故か落ち着かない。

 しかも、それっきり何も話さないキャナルとの場が持たず、とりあえず話題を探したのだが。

「あ・・・・の・・・、仕事も無い事だし、三人でばあちゃんの墓参りに行かないか?」

「・・・・ごめんね。悪いけど、今日は船のメンテナンスをしなきゃいけないから、二人で行って来て」

 そう言ってキャナルは家を出ようとした。

「!!・・・ちょっ・・・・待てよ、キャナル!」

 ―――― こんな時、こいつの腕を掴めたなら。

 普段なら、実体化プログラムを実行させている間はホログラフである彼女に触れる事もできるのだが、

今は俺に捕まるまいとそれを解除したらしい。

 慌てて呼び止めると、キャナルは歩みを止めてこちらを振り返った。

「なあに?」

 その表情は、笑っていてもどこか寂しそうに見える。

 触れる事も出来ずに通り抜けてしまう自分の腕にジレンマを覚え、拳をぎゅっと握り締めながら

キャナルと向かい合った。

「・・・・・・・・どうして・・・・・・・」

「え?」

「い、いや・・・・何でもないんだ・・・・・」

「変なケイン」

 キャナルはくすっと笑って、そのまま踵を返すとソードブレイカーへと戻っていった。

「・・・・・・・・何やってんだ、俺・・・・・・・・」