夏の出来事 【プール編】 1
八月の日差しがジリジリと照りつける午後。
リビングで雑誌を読んでいた俺を呼ぶ声が聞こえた。
「亮さん見て見てっ、新しい水着買ったの。ほらっ♪」
そう言って水着姿を俺に見せた里緒は、嬉しそうに胸を張って両手を広げた。
「・・・・・・あたしの胸に飛び込んで来て。・・・・って事か?」
「ちっ・・・違うわよ!! この水着どう思う? って聞いてるのっ!」
笑いながら里緒をからかうと、彼女は真っ赤になって怒った。
本当にからかいがいのある可愛い奥さんで嬉しいよ。
「ああ、水着ね。うん、良く似合ってるよ。特にこの胸元の辺りがなんとも・・・・」
「っ・・・・・・・!! エッチっっっ!!」
ぷるんと柔らかそうな膨らみが強調されているのを見て、思わずふにゅっと揉んでしまい、
里緒は更に赤くなった。
「ごめん、ごめん、ついムラムラと・・・。で? その水着でどうしたいんだ?」
怒った里緒を宥めるように頬をなでて、髪を軽く梳いてやる。
「あ、あのね、プールに行かない?」
俺の手の動きに恥ずかしそうに俯いたまま、里緒は言った。
「プール?」
「うん。ほら、亮さん海は駄目だから、プールならいいでしょ?今年はまだ一回も行ってないし」
「でもなぁ・・・・・。うーん・・・・・プールかぁ・・・・・」
「・・・・・・・嫌なの?」
乗り気でない俺の返事に、里緒は少し不安そうに訊いてくる。
「嫌って言うか・・・・・・・ん? ひょっとしてお前、去年の事覚えてないのか?」
「去年?・・・・・って・・・・・・あっ!」
「やっぱり忘れてたのか・・・・・・・・」
そう。
去年の夏もやはり今頃だった。
俺と里緒は二人でプールへと出掛けて行き、とんでもない目に遭ったのだ。
あれはまだ、俺達が結婚する前・・・・・・・・。
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「涼兄っ! 早く早くっ!!」
「そんなに急ぐと転ぶぞ。焦らなくてもプールは逃げないよ」
大学が忙しくてなかなか会えない俺と久しぶりに出掛けられたのが余程嬉しいのか、里緒は朝から
はしゃいでいた。
彼女は白のワンピースの水着に麻のパレオを腰に巻き、何とも可愛らしい格好である。
俺はというと、焼くと真っ赤になってしまうタイプなので上にパーカーを羽織っていた。
「わぁ、結構混んでるね」
夏の太陽が降り注ぐ中、そう言って里緒は眩しそうに手をかざす。
見た目は幼く見えがちだが、ふとした瞬間見せるしぐさが何ともいえぬ女性の魅力を醸し出している。
俺の目に里緒は日に日に眩しく映っていく。
そしてそれは、俺以外の人間にとっても同じ事で。
俺を知った里緒の体は、まるでフェロモンを撒き散らしているかのように男共の目を惹きつけた。
この場所でも例外ではない。
さすがに隣に俺がいる為、声を掛けてくる輩はいないが、それでも目線は里緒を追っているのが分かる。
(やっかいだな・・・・・)
そう思ったその時。
「・・・・・・涼兄・・・・・。そのパーカー、絶対脱がないでね」
「・・・・・・どうしてだ?」
もとより脱ぐつもりは無かったが、念を押してくる里緒にそう尋ねると、
「・・・・・・皆、涼兄の事見てる・・・・・・」
「・・・・・ん?」
里緒の事にばかり気をとられて気付かなかったが、どうやら俺もその対象らしい。
見れば先程の男共と同じくらいの女共がこちらをチラチラと窺っている。
(いい加減にしてくれ・・・・・・)
思わず頭を抱えたくなってしまう。