春風にのせて 2
「里緒・・・・。前にも言っただろ? 後悔なんかしてないよ。むしろ良かったと思ってる。

もちろん最初は戸惑ったし、父さん達がどんな思いで俺を引き取ったのか分からなかったから

反発もした。でも、そんな俺に、2人は本当の子供と同じように接してくれた。

一緒に泣いたり、笑ったり、怒ったり・・・・。

重ねた年月が、俺はこの家の子供なんだと教えてくれたよ。お前の事だってそうだ。

そうして育ったからこそ、お前の一番近くで、その成長を見守ってきたし、愛する事も出来た。

本当に嬉しかったんだ」

「亮さん・・・・っ」

 泣きながらしがみついてくる里緒を更に強く抱きしめる。

 そう。これが俺の本音だ。後悔などしていない。

 だって、お前の側にいられたのだから。




 父さん・・・・。母さん・・・・。これが俺の選んだ女性だよ。

 俺の為に心を痛めて、心配して、想ってくれる、優しくてとてもいい娘なんだ。

 成長した俺たちを見せたかった・・・・。

 もう、二度と逢う事は出来ないけど、2人の事はいつまでも俺の心の中で想い続けるから・・・・。

 どうか、俺達を見守っていて欲しい・・・・。




「ねぇ、亮さん。来年も再来年も、その先もずっとずっと、2人に会いに来ようね」

 帰りの車の中で、里緒が嬉しそうに言った。

「ああ、そうしよう」

 里緒・・・・お前のそんな言葉の一つ一つが俺の心をどれだけ優しさで満たしてくれるかなど、

お前は知らないんだろうな・・・・。

 本当に自分の事は何も分かっていない彼女に、俺は笑いながらそう答えた。



                                                        END